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世界のダム 全項目表 [49]

バイオントダム Vajont
 建設当時は世界一高いアーチダムだった。完成して間もなく、1963年に隣接の地山が地滑りを起こし、それが原因で貯水池の水が越流し、下流で2000人を超える犠牲者を出す大惨事が発生。その後ダムは放棄され、現在は機能を果たしていない。
 イタリア北部、イタリア・アルプスにあるピアーブ(Piave)川の左支川バイオント川の深い渓谷に位置する。ピアーブ川総合開発計画の一環として計画された。当初は民間会社である「アドリア電力会社」により建設され、1960年秋に完成したが、電力国有化法により、1962年に「イタリア電力会社」に移管された。
 ダムは1960年11月30日に竣工。堤高262m、堤頂長190m。
 水位を徐々に上げ、130mとなった時点で最初の地滑りがあった。この地滑りで貯水池は当時の水位で2分された形になったため、将来の地滑りの拡大を想定して両方を結ぶバイパス水路を1960~61年に建設した。また、ダムのアバットメントの下流沿いに補強を施した。1961年以降、本格的に水位を上げ始めた。
 1963年9月15日には地滑り速度21mm/日、26には22mm/日。地滑り速度が大きくなったので、貯水池の水位を下げるため、左岸の3本のトンネルから放水。9月28日からは激しい降雨。10月8日には地滑りの動きが活発に。
 10月9日22時39分、長さ2.0km、幅1.6kmの左岸の地山が地滑りを起こし、1分に満たない時間で、貯水池の中に突入。このときの水位は満水位の22m下であり、貯水量は1億1500万立方メートルであったが、滑落した土量は2億4000万立方メートルにもなると推定されている。貯水されていた水は対岸の右岸上方へ250m押し上げられ、次に左岸側に戻ってきて、同時にダムの頂部を100mの高さで跳び越え、下流に流れ出た。ダム工事関係者と下流の5地区で、2125人の死者が出る大惨事となった。
 事故責任については、裁判があって、事故に先立つ3、4日前に集落から住民を避難させるべきであったとして、8人が有罪となった。
 ダム自体は大きな損傷を受けることはなかったが、その後放棄され、現在は機能を果たしていない。
このごろ wDNレポート(2)~ダムエンジニア3大悲劇
国/河川 Italy[イタリア]/Vajont  
完成年 1960
ダムタイプアーチ
機能
堤高/堤頂長/堤体積262m/190m/360千m3
貯水池容量168百万m3
リンク Vajont
Structural Engineering Water Resources Engineering, Dams

【注】
データは、「WORLD REGISTER OF DAMS 2003」を基礎として、「Water Power & Dam Construction Yearbook 2003」、これら書物の新しい年版、雑誌の記事、ネット上の情報などを元に修正・補充して作成したものですが、資料によって情報内容が異なることがしばしばあり、正確性には限界があります。なお、ダムタイプについては、日本の型式分類の概念と必ずしも一致しない点がありますので、注意が必要です。

機能の略号は次の通り。
  C : Compensation
  F : Flood/River controll
  G : GroundWater recharge
  H : Hydro power
  I : Irrigation
  M : Multi-puroose
  N : Navigation
  O : Other
  P : Pollution controll
  R : Recreation
  T : Transfer
  TA : Tailings
  W : Water supply